最高の試合といえる ジェフvsラインメール


今年3月、ラインメール青森に対して、おれは冒頭のツイートをした。
これを見たサッカーファンは、「バカじゃないのか?」と思った人もいるはず。
何故なら、昨シーズン終了後に、スタメン11人中6人が、「ヴァンラーレ」と「奈良クラブ」に移籍したからだ。監督までヴァンラーレに移った。
河端選手は引退し、今季も在籍しているのは4人のみ。
(昨シーズン、ラスト2節で行われた首位攻防戦のスタメン)
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しかし、監督は(個人的に高く評価している)望月達也氏が就任。
多木利音や太田徹郎など、相手にとって「怖い存在」となる攻撃的な選手を補強。
リーグ戦では中位にとどまるも、天皇杯青森県予選を勝ち抜き、本戦1回戦はPK戦で辛くも勝利。
(天皇杯1回戦のスタメン)
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そして昨日、天皇杯2回戦でジェフ千葉と対戦。ラインメールにとって、J1経験クラブと公式戦で対戦するのは初めて。
1回戦と同じベストメンバーを組みたかったはずだが…
(天皇杯2回戦のスタメン)
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スタメンCBの1人が出場停止。
通常、控えCBの1番手となる選手は、ケガ。
スタメン右SBも出場できない。
ラインメールのDFラインは、非常事態といえる布陣だ。
おれは、開門直後から「ラインメール応援席」に混ぜてもらったが、不思議なほど青森ファンは落ち着いていた。
雑談では、笑い声もよく聞こえてくる。
しばらくして、ピッチ内では、選手のアップが始まった。
3月のリーグ戦(vsマルヤス岡崎@名古屋港)同様、選手たちは落ち着いた表情に見えた。
望月監督は、ボール拾いを手伝うなど、裏方として奔走。
ピッチ内練習が終了し、両チームの選手紹介が行われる。
選手紹介後、1人の青森サポが「岡山は、ここで桃太郎の応援歌を歌いますよね」話した。
そのことがキッカケで一部の青森サポは小さな声&太鼓を小さく鳴らし

モノタロウのテレビCMソングを歌う。 個人的にはツボ。
応援席が、「ほどよい空気」になったところで選手入場。
ジェフサポーターの気勢が上がる。青森サポも黙っていない。
キックオフとなり、青森サポのボルテージは、さらに上がる。
そして、「ねぶた」応援歌を、フクアリで初披露。

この応援歌は効いたか分からないが、立ち上がり3分でラインメール青森が先制。
当然、青森応援席は大盛り上がり。もちろん、おれも大喜び。(頭の中では「何で、こんな簡単にDFラインの裏を取れるのか?」と考えていた)
先に失点したジェフは猛攻を仕掛けてくると思ったが、ラインメールの守備は素晴らしかった。
DFラインは急造だった。しかし、選手間で意思疎通を図る声がよく出ていた。それも、1人だけでなく年上年下関係なく全ての選手が声を出している。
「DF同士の距離感」と「DFラインの高さ」が絶妙で、ジェフは裏を取れない。
決定機をほとんど作らせなかった。奥山&小栗のダブルボランチは、運動量球際の強さを発揮。セカンドボールをジェフに拾われても、前を向かせない。ボールを拾えば、奥山は絶妙なパスで裏を取る。小栗は、ドリブルで空いているエリアに侵入。多木利音はボールを必死にキープし、攻撃的な選手がすぐさま回収する。
ボール保持率は、圧倒的に負けていたが、内容は決して悪くない。GK横山が「横っ飛び」する危ないシュートを打たれたシーンは数えるほど。青森応援席のテンションは否が応でも上昇。
このまま前半終了。ジェフサポは、奮起を促す意味でブーイングを送る。
ハーフタイム中、青森の控え選手はピッチ上で「トリカゴ」を行っていた。ほどよい雰囲気に見えたが、GK伊藤拓真がコーチ役のように指示を出していた。選手個々が役割を全うしている。
後半になっても、両軍とも交代はなし。
青森応援席は、様々な応援歌で選手を鼓舞する。特に、「危険な時間帯」や「勝負の時間帯」でのねぶたには、テンションが上がった。
後半15分過ぎから、ジェフは指宿や矢田を投入し、同点を狙いに行く。
それが実り、75分ころに同点に追いつく。
青森応援席は「選手入場時の応援歌」で士気を高める。
ジェフは、エースストライカーのラリベイを投入し、90分以内の勝ち越しゴールを狙う。しかし、膠着状態が続く。
青森にも、チャンスはあったが得点できず、後半終了。30分間の延長戦に突入。
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前半45分終了時の青森応援席は、「声がもう出ない」というサポもいたが、このインターバルでそういった発言をするサポはいない。「ランナーズハイ」ならぬ「応援ハイ」の状態だった。
延長戦に入る前後のタイミングで、望月監督は中盤の選手から交代。選手の運動量がキツいことを伺わせた。
ジェフが主導権を握りつつあった延長前半8分ころ、清武が勝ち越しゴールを決める。
ラインメールはその場で倒れ込む選手もいて、DF高井 青がボールをセンターサークルの方へ投げ返すまで、長い間があった。この間、声を出す選手はほとんどいない。
その雰囲気を察した青森のコールリーダーは、再び「選手入場時の応援歌」で選手を発奮させる。
ロスタイムも含めたら、まだ20分以上の時間がある。おれは、悲観することもないし、焦ることもないと思っていた。
この失点で青森の選手は開き直ったか、運動量が上がったように感じた。
延長前半は、ジェフが1点リードで終了。
延長後半に入り、負けているラインメールは「前に出る」しかない状況。
青森は、多木利音にボールを集めるが、徹底的なマークにあい、良い形でシュートを打てない。
しかし、ジェフはサイドへの対応が悪く、上がっていた小口がフリーになる。
クロスを上げる。多木がニアで合わせてヘディングシュートを打つ。クロスバーに嫌われ、青森応援席は一瞬悲鳴に包まれる。
その直後、ジェフの選手よりも早く反応したFW浜田が、いち早くこぼれ球に追いつき、シュート。豪快にネットを揺らす。
目の前のネットが揺れたとき、おれは副審を見た。
ゴールライン上で旗を下ろし、センターラインに向けて走り出そうとする姿だった。
ラインメールが同点に追いついた
ピッチ上では、青森ベンチ前に選手が駆け寄り、雄たけびをあげる。
青森応援席の様子は、言うまでもない。
このゴールで、形勢が逆転。ラインメールの運動量が、ジェフを凌駕する。ペナルティエリア内に侵入する回数も、青森のほうが多い。
明らかに、逆転ゴールを狙える状況だ。
青森サポは、いろんな応援歌を歌い続ける。最後の力を振り絞り、ねぶたで盛り上げる。
しかし、決定的なシュートは打てない。
結局、同点のまま延長後半も終了。
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PK戦については、動画がたくさんアップされているので省略。
ジェフが3回戦へ進出した。
青森の選手たちは、サポーターの元へあいさつに向かう。
「充実感と悔しさ」が入り混じった表情に見えた。
ベンチへ引き上げる前、多木利音が応援席の前まで出向き、1人1人と握手する。
本当に、サポーター想いの選手だ。
選手がピッチ上から姿を消し、おれは弾幕の撤収作業を手伝った。
その前後で、青森サポにお礼のあいさつをした。
青森の応援に加勢させてもらったのは、天皇杯1回戦とこの試合だけ(3月の名古屋港も観戦したが、そのときいた青森サポは極めて少人数だった)。
天皇杯は2試合とも全力を尽くした上で、劇的な試合展開だった。
気が付いたら、「一方的な思い込みで」青森サポに対し、親近感を抱くようになっていた。
ねぶたの太鼓を懸命に叩いていたサポから、若いサポまで、おれみたいな部外者でも良くしてくれた。結果、別れのあいさつが、少し寂しかった…
ラインメール青森に限らず、日本各地には「一体感のあるサッカーチーム」がたくさんある。
W杯期間中でも、J2・J3・JFL・関東サッカーリーグ等の地域リーグは開催予定だ。
サッカーファンは、是非とも家の近くのサッカーチームを、スタジアムで観てほしい。
感動するプレーは、テレビの中ではなく、スタジアムで起きる。
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(以下、贔屓チームに対する本音)
蘇我駅までの帰路で、浦安ファン同士で話したこと
「今季、浦安の応援で、ここまで燃え尽きたことはない」
ラインメールの運動量は素晴らしく、足元の技術がさほどなくても、応援したくなる試合内容だった。
試合中、「浦安のボランチが奥山&小栗だったら…」というありえない想像をしてしまった。
延長前半で勝ち越された後、それを跳ね返すメンタルも大したものだ