「レイトン・オリエントFC」というクラブを知っている日本人は、年中コスプレする中年のことを知っているサッカーファンくらいしかいないだろう。
年中コスプレする中年を取り上げたNumberの記事:勝ち負けや昇格だけが全てじゃない!JFLの“総統”が語るサッカー観戦術。(Number web)
この中年は、ときどきこのクラブの話をする。
彼がチームの説明をするとき、3部や4部に所属していながら、「昇格を目指すことを目標としない」方針である、としている。
ところが、近年は成績低迷が続き5部リーグに所属している(4部まではプロリーグ。5部リーグは全国リーグだが、プロアマ混合)。
5部リーグから4部リーグに自動昇格するには、リーグ優勝するしかない。2位~5位が、昇格プレーオフに回る厳しいレギュレーションだ。
おれが観戦した試合は、レイトン・オリエントFC vs Wrexham というカードだった。
1試合消化の早いWrexhamが首位だ。しかし、レイトンが勝てば、リーグ終盤で首位に躍り出る大一番。
どういう雰囲気なのかワクワク想像しながら、チケット売り場に並ぶ。
(日本のJFLのように、関係者にチケットを渡すブースもある)
チケットの値段は、5部リーグなのに強気と思える値段設定だ。(現在のレートで1ポンドは、約145円)
但し、親子連れにとっては、良心的といえる。
地元周辺に住んでいると思われるファンに混じって、売り場の列に並んでいると、1人のファンから声を掛けられる。
「シーズンチケットが1枚余っているから、チケットをあげるよ」と言われ、遠慮なく譲ってもらう(注、今シーズンのシーズンチケットは3,700枚以上売れている。おれが譲り受けたチケットは年間で289ポンド)。
今にして思えば、おれみたいなアジア人が、レイトンの試合に来たことが嬉しかったのだろう。心遣いに感謝。
嬉々として入場口でチケットをもぎってもらい、スタジアムの中へ(手荷物検査は少しあった)
スタジアムの中に入って、とても驚いた。
距離感、雰囲気がとても素晴らしいスタジアムだ。
日本に例えると、日立台と都田のいいとこどりをした上で、
全席個別のシート&全席屋根付き
5部リーグで、こんな専用スタジアムがあるとは…
(自前のクラブハウスと練習場もあり)
さらに、スタジアムの四隅には、マンションが入り組んでいる。
距離感でいうと、ユアテックスタジアム仙台の四隅のスタンドより近いところに、マンションがドンと建っている感覚だ。
(おれがマンションの住民なら、「○○(新加入のレンタル選手の名前)に、この一室をあげる!」というゲートフラッグを作成している)
感動している間に、選手入場を迎える。おれが座っているメインスタンドはもちろん、他のスタンドも総立ちで選手を迎える。たくさんの親子連れも、老夫婦も。
そして、7,800人収容のスタジアムに、6,643人が駆け付けた大一番が、キックオフ。
ピッチ上の話をすると、「…やはり5部リーグだな」と思わせるプレーが多かった。運動量やプレスの掛け方、特にトラップ技術etc.がプロアマ混合らしいレベルだった。天皇杯バージョンのHonda FCなら互角になりそうな内容だ。
しかし、スタンドの雰囲気はとても5部とは思えなかった。
自然発生の応援でほとんど声は途切れていた。しかし、ワンプレーに対する反応が、日本よりもはるかに大きい。
積極的に攻撃した結果、わずかに連携が合わなかったプレーは、拍手や声援を送るファンもいた。
個人的には、スペリオ城北の試合が行われる赤スポを思い出す。
いいプレー(高い位置でボールを奪うetc.)には大きな拍手。相手のラフプレーやミスジャッジには立ち上がって起こる人が多数。それ以外のシーンで、ブーイングは皆無。
決定機のシュートを外したときの「ウー!!」という音は、とても迫力があった。
ただ、選手がトラップミスしたときのリアクションが、「アイツなら仕方ないよ。ハハハ」という観客が多かったのは予想外だった。
日本のアマチュアリーグでもよく見る光景だったからである。
前半45分で、1番印象に残ったのは、レイトン・オリエントのマスコットキャラクターだ。
マスコットキャラクターは、ゴールラインの近くにいたのだが、選手がラフプレーで倒されたとき、
選手を同じように転がって、スネのあたりを手で抑えていた。
相手を批判しているのか、選手と一緒に戦っている意思表示なのかは定かではない。
このまま、前半はスコアレスで終了する。
勝負の後半、レイトンのサポーターが自然応援したときの声量が大きくなる。
「カーモン!オリエント!」(「カーモン!ウラーワレッズ!」と同じテンポ)の応援は、なかなかの迫力だ。
その流れに乗せられ、歓喜の瞬間は後半27分に訪れた。
WrexhamがPA内でボールをクリアしきれず、レイトンの選手にボールが渡る。すかさずシュートを打つと、Wrexhamの選手に当たり角度が変わった。ボールはGKの手をかすめて、ネットに吸い込まれた。先制点が生まれた。
レイトンのファンは、観戦している場所に関係なく立ち上がり、「イエー!!!!」という野太い大歓声がスタジアムにこだまする。
日本では、なかなか体感できない一体感だ。
このまま試合が進み、試合終了5分前になったところで、500人以上詰めかけたアウェイサポーターエリア周辺に30人以上の警備員が配備された。
結局、レイトンが虎の子の1点を守り抜き、試合終了。
レイトンが首位に躍り出た。
両チームの選手とも、それぞれのファン・サポーターの近くに向かい、あいさつをする。
首位から陥落したWrexhamのファン・サポーターは、どういう反応をするのかと思ったら、
拍手で出迎えるファンが多数だった。
この試合を観たおれは、レイトンのグッズを購入した。
ショップの中は、子供向けのグッズがとても充実していた。
(ショップ内のため、写真は撮影できず)
この試合を観ただけで、とても満足したが、この日はもう1試合観戦した。
その観戦記は、また後ほど。
追記:
レイトン・オリエント vs Wrexham の試合ダイジェスト動画